Erik Satie - Relache

ニュース - 文化 - ストーンヘンジ、巨石の運搬方法に新説

スにある巨石遺跡ストーンヘンジを作った石器時代のブリトン人は、どのようにして重さ45トンの厚い石板を何十キロも運搬したのだろうか。4500年前の環状列石にまつわる最大の謎の一つだ。新しい理論によると、車輪がなかった当時は、小型のボールを作って利用していた可能性があるという。

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 これまでの考えでは、つき固めた地面の上に切り出した丸太を並べた“木製ローラー”や、油を引いた木製レール上で巨大な木製そりを滑らせる方法などが提案されている。しかし、ローラー用の通路を固めた場合に証拠として残るはずの溝はまだ発見されていない。そりのアイデアもある程度の信憑性はあるが、膨大な労働力を要する。1997年の研究によると、ストーンヘンジで最大級の石を動かすには一度に数百人の男性が必要になるという。

 これに対しイギリスのエクセター大学大学院博士課程で生物科学を研究するアンドルー・ヤング氏は、溝付きのレールに複数のボールを並べ、その上で巨石を転がすという新説を提案した。

 スコットランドのアバディーンシャー州にある新石器時代の環状列石付近では、球状に削られた石器が頻繁に出土する。ヤング氏はそこから“ボール・ベアリング”案を思いついた。「これらの石球の大きさや重さを測ったところ、どれも同じサイズで直径約70ミリだった。単独ではなく一緒に使うために作ったものに違いない」とヤング氏はナショナル ジオグラフィックニュースに語った。

 ヤング氏も認めるように、石球が出土したのはアバディーンシャー州とオークニー諸島にある環状列石の付近のみで、ストーンヘンジのある南部のソールズベリー平原では発見されていない。「南部では、彫るのに時間がかからず、軽くて運びやすい木製ボールの方が好まれていたのではないか。木製だから大昔に腐って消失したのだろう」とヤング氏は推測している。

 ヤング氏は仮説を検証するため、ボールとレールの仕組みを再現する縮小モデルを作製した。「指1本で重さ100キロのコンクリートを押せることがわかった」とヤング氏は話す。

 さらに同氏は、主任教官のブルース・ブラッドリー氏の協力や、アメリカの公共放送サービス(PBS)のドキュメンタリー・シリーズ「Nova」から資金援助を得て、ストーンヘンジ級の巨石で運搬可能かどうか検証するために、より大規模な実験を行った。すると予想どおり、わずか7人で4トンの積荷を運搬できることがわかった。ストーンヘンジで最小の石と同じ重さだ。「この革新的な装置で一日に32キロの距離を移動できたはずだ」とヤング氏は推定する。

 だが、ストーンヘンジのサラセン石の重量は最大45トンもある。これに関してヤング氏は、石器時代の実際の装置では今回の実験よりも重い積荷に対応できただろうと推測している。例えば、人ではなく牛に石を引かせたのではないか。多くの環状列石では周囲の溝から燃焼した牛の骨が出土しており、裏づけはあると言えるだろう。

 また4500年前の手つかずの原生林からは、経年変化によって硬化したオーク材が簡単に手に入ったと考えられる。実験では予算の都合で柔らかい木材を使ったが、硬化した木材ならより強度が高く、弾力性のある装置が作れただろう。

 政府機関イングリッシュ・ヘリテージの考古学者デイビッド・バチェラー氏は、今回のアイデアはもっともらしいが、納得できない部分もあると考えている。「そりの手法の発展形のようだが、レールを敷くにはもっと高度な技術が必要になる。すべて同じサイズのボールを作るのも大変な作業だ。動物性油脂を使えばボールは必要ないのではないか」と同氏は指摘している。

 今回の実験は11月30日、エクセター大学の声明で発表された。

Photograph courtesy University of Exeter